読んではいけない真夜中の『東京タワー』

 とうとう、我慢できずに読んでしまいました。

 「ボクが一番恐れていること。小さな頃から最も不安な気分に襲われること。想像しただけで枕を頭から押さえて両耳を塞ぎたくなったこと。いつかは本当にやってくること。確実に訪れることがわかっている恐怖」(315頁)                               


 先月、父の姉が急に亡くなった。父の姉は、何も悪いところもなく、他人の葬式に参列して、その場で倒れ、すぐに息子が勤務する病院に運ばれ、手術を受けたのだが、脳内出血でどうにもならなかった。葬式では、「最高の医療を受けて亡くなったんだから仕方がない」と言う叔父・叔母に笑って答えていた息子さんだったのだが、最後のお別れで、そっとその場を去り、隠れて泣いていた。
 私は不謹慎だがその場で、いつかやってくる「自分の番」を想像し、涙が止まらなかった。

 さらに、最近母の姉が余命半年を宣告され、泣きじゃくる従姉妹を見て母は、「私は思い通りに生きたから、十分やで。あんたは泣いたら、あかん。笑って見送れ。」


 働かなくなってしまった父にかわり、朝4時から夜11時まで働いていた母。
 私が20代、行き先も告げずに5年も家を出たのに、一度も居所を聞かなかった母。
 32歳で、突然家に帰ると言い出した私に、何も聞かずに黙々と家財道具の処分を手伝ってくれた母。
 やっと最近、まともな職に就いた私を、まるで何も無かったように、近所に褒めてまわる母。


 私は40近くにもなるのにまだ、自分の家族さえ作れていない。また母の苦労を一度も超えた気もしない。
 それなのに、そんな母がいなくなる日に、泣かずにいられる訳はない。